入居者紹介 / 心に馴染む生活雑貨 -SIRUHA-
2024/02/05
入居者紹介 / 心に馴染む生活雑貨 -SIRUHA-

SIRUHA(シルハ)は、「書く道具と出掛ける道具」というコンセプトで、手帳やカバンなどの生活雑貨を手掛けています。

創造的な仕事をするうえで大切な行動となる「書く」と「出掛ける」。それらの行動を手助けすることが、SIRUHAの商品の役割です。

多くの人はアイディアが思い浮かんだときに、書き留めるでしょう。

そして、アイディアを生み出すためには、自然に触れたり、他者と関わったりするための出掛けることが大切です。

SIRUHAは「書く」と「出掛ける」を違和感なくおこなえる道具を通じて、人が創造的になるための支援を世の中に届けています。

 

SIRUHAが手掛けるもの

書くための道具

SIRUHAの理念が感じ取れる代表的な商品は手帳です。

アイディアが生まれた瞬間にすぐに書き留められるように、ポケットに入れられる大きさで作られています。

また、SIRUHAの手帳は、あえて書く以外の機能を取り払っています。例えば、一般的な手帳に見られるカードホルダーは、SIRUHAの手帳にはありません。

考えること、書くことに集中するために必要な最低限の機能に留めているのです。

商品の印象を左右する外装には革を使用しています。革製品にこだわっているのではなく、機能を際立たせる素材を選んだ結果として、革を使用した手帳が生まれました。

創造性を引き出すための工夫が、SIRUHAの手帳には詰め込まれているのです。

 

出掛けるための道具

財布もSIRUHAの個性が感じられる商品。

出掛けるときの必需品である財布には、様々な形が存在しています。世の中にある財布のデザインを研究し、最も身軽になれる形を追求した結果がSIRUHAの財布です。

紙幣とカードを収納できる2つ折り。そして、見やすさと取り出しやすさを優先した浅めのポケットには、小銭が入れられます。レシート等を取っておくためのポケットも、外側に取り付けられています。

財布に限らず、商品を開発するときには、まず使いやすさを考えてから、機能を実現するために必要な素材を選んでいるそうです。財布の場合には、取り出しやすさを追求した結果として布が選ばれました。

SIRUHAの商品のなかで、最も人気のあることからも、多くの人が使いやすさを認めていることが伺い知れます。

 

SIRUHAの商品が手に取れる場所

SIRUHAの商品が見られるもっとも身近な場所は、SIRUHAのウェブページです。→ SIRUHA公式サイトはこちら

書くための道具と出掛けるための道具を眺められます。

また、シェアアトリエ海の校舎 2舎1階にあるSIRUHAが入居している教室には、商品のギャラリーがあるので、実物を見てから購入することも可能です。

岡山県を中心に百貨店やクラフトマルシェなどに出店しているため、海の校舎の外でもSIRUHAの商品を見かける機会もあります。

出店情報については、SIRUHAのウェブページやSNSのアカウントを確認しましょう。

 

SIRUHAを作った人

SIRUHAの代表 藤本進司(ふじもと しんじ)さんが事業を始めたきっかけは、社会に対する不安を解消するためでした。

幼少期からものづくりに興味があった藤本さんは、工業高校に進学。卒業後は、旋盤工として大手重工業メーカーに就職します。

藤本さんの配属先は、新聞の印刷に使われる輪転印刷機を製造する部門。当時は、情報を発信する媒体が紙からインターネットへ変化していった時代で、輪転印刷機の需要は減少していました。

そして、藤本さんの仕事も次第に減っていきます。

大手企業であろうと時代の流れには抗えないことを痛感した藤本さんは、先行きの見えない社会でも生きぬく力を身につけようと、個人で事業を始めることを決意したのです。

 

違和感を生活から取り除く道具が生まれた理由

藤本さんが起業を決めたのは、子どもが生まれる時期と重なっていました。

子どもとの生活が始まると、現在の社会だけでなく、藤本さん自身が死んだ後の世界にも意識が向くようになり、世の中を良い方向に変化させたいという想いが芽生えてきます。そして、「どんな社会なら生きやすいだろうか」という問いに、藤本さんは手帳に答えを書くことで向き合っていました。

答えを書き留めるなかで具体的になったものは、「すべての人が人生のなかの違和感を解消できる社会」と「すべての人がやりたいことを突き詰められる社会」。なにより、手帳に書く作業をしながら、書くに至るまでの障害を解消することが、アイディアを生み出すために大切だと感じとります。

同時に、他者の話を聞いたり、自然や芸術に触れたりするなど、刺激を受けることもアイディアを生み出すためには大切だと実感。

書くための違和感を取り除き、人が抵抗を感じることなく出掛けられるような状況を、ものづくりを通じて実現しようと思い立ちました。不安や違和感を生活から取り除き、多くの人の思考や行動を自由にしようとする工夫がSIRUHAの商品には施されているのです。

 

SIRUHAが生まれるまで

ものづくりなら事業を立ち上げられると藤本さんが考えた理由は、実は輪転印刷機の製造にありました。

配属先で受ける仕事の多くは特注品であり、部品を独自に製作するだけでなく、部品を加工するための工具も自作する必要があります。

製作工程が複雑であり、要求される加工精度も高い輪転印刷機の製造。様々な工作機械で金属を加工するなかで、藤本さんのものづくりに対する自信は培われていきました。

起業を決めて退職してからの1年間、藤本さんは自宅に引きこもり、ミシンを使った縫製技術を鍛えるために、商品の試作をひたすら繰り返します。

その次の1年間は、製作活動を一切止めて、物販について勉強しようと、気に入っている文房具などを紹介するブログを開始。

サーバーの運営方法からコピーライティングまで、インターネットで商品を販売する技術を身につけました。

会社を辞めて3年目からは、自分で手掛けた商品をインターネット上で販売するようになります。

旋盤工としての経験と会社を辞めてからの修業の期間が、SIRUHAのビジネスの礎になっているのです。

 

SIRUHAの成長と葛藤

商品の製作と広告、販売の技術を身につけたのち、SIRUHAの事業が本格的にスタートしました。その後、世の中の多くの人に商品が届くようになりましたが、商品の製作に多くの時間を費やすことになります。

そのため、商品のアイディアを形にするために試行錯誤する時間がなくなり、販売するだけでなく、開発にも時間を注ぎたいという葛藤が生まれました。

そこで、従業員に協力してもらいながら商品を製作するようになり、藤本さんはアイディアを実現するための環境を整えます。

事業を拡大することではなく、アイディアを形にするために、従業員の力を借りながら適切な規模で続けられるものづくりを目指しました。

 

海の校舎との出会い

海の校舎を立ち上げる以前から、藤本さんは小規模の事業者が近い距離で協力し合える拠点を作りたいと思い描いていました。

シェアアトリエの構想を考えていたときに、偶然にも廃校となる大島東小学校の活用方法について市役所の職員から持ちかけられます。

校舎が気になった藤本さんは、2018年4月に1人で廃校となった大島東小学校の敷地に足を運びます。

誰もいない静かな木造校舎の周囲を散策。窓から覗き込んだ廊下は綺麗に磨かれており、木製の床に太陽の光が反射して淡く輝いていました。

そして、木造校舎の真横にある桜の木の下には、歓迎するかのように桃色の絨毯が敷かれていました。

藤本さんは、木造校舎が作り出した光景に心を奪われながら、学校としての役割を終えた校舎が新たな存在に生まれ変わる瞬間を感じ取ります。

その後、同時期にシェアアトリエの構想を思い描いていた木工家具職人の南智之(みなみ ともゆき)さんに出会い、一緒に海の校舎を立ち上げるに至りました。

 

海の校舎が育んだもの

シェアアトリエ海の校舎を運営して、藤本さんは異なる業種の人と会う機会が増えていきました。

木工職人や画家などの創造性を求められるような作家だけでなく、廃校活用という公共性や地域性の高い事業に乗り出したことで行政や地域の人たちとも深く関わるようになります。

自分では気が付かなかった物事の捉え方を知ることで、新たな商品のアイディアが生まれたこともあれば、イベントの企画や発信においてもやれることの幅が広がりました。

藤本さんは、小さな挑戦を繰り返しながらSIRUHAのものづくりの事業を立ち上げて、「違和感を生活から取り除く」という目的を実現しています。

次の目標は、ものづくりだけでなく、ものづくり以外の方法でも社会から違和感を取り除くこと。起業に至るまでの経験やこれまでに培ってきた人との繋がりを、夢の実現に向けて行動する人たちに共有することで支援したいと話しています。

「ものづくりに限らずに、人と人とをつなぐような取り組みを通じて、社会にある違和感を取り除き、やりたいことを支援する活動を続けていきたい」と藤本さんは語りました。

海の校舎 公開インタビューについて

この文章は、2024年1月21日にシェアアトリエ海の校舎で行われた第1回 海の校舎 公開インタビューの内容に基づいて書かれています。

公開インタビューの目的は、海の校舎で活躍するクリエイターたちの想いを、地域の方々や海の校舎に関わる人たちへ届けること。

第1回 公開インタビューでは、海の校舎を立ち上げたクリエイターの1人としてSIRUHAの藤本進司さんから起業した背景や商品へのこだわりを伺いました。

クリエイターたちが創作活動に向ける直向きな想いを文章として記録することで、クリエイターの想いを伝えていきます。